大学職員になりたいと考えている方は、まず「大学」という組織が他の企業や官公庁とどう違うのかを知ることが大切です。大学は研究や教育を主軸としており、教員と学生をサポートするための仕組みを整え、学内外の連携を図って運営を行っています。大学職員の業務は、学生の履修や就職支援に関するものから、研究費の管理、広報、総務、財務など多岐にわたります。こうした幅広い業務を担うためには、大学という特殊な環境で求められる知識やスキルを身につけておかなければなりません。そのため、大学職員を目指すうえでの勉強法は、一般企業の就職準備だけではカバーしきれない部分を補う必要があります。
大学職員になるための大まかな流れとしては、「情報収集」「筆記試験対策」「面接・グループディスカッション対策」「専門知識の吸収」が主な柱になるでしょう。情報収集では、各大学の採用情報や採用試験の内容を細かく比較し、自分がどんなキャリアを築きたいのかをイメージすることが肝要です。大学職員は公務員ではないため、学校法人ごとに採用フローが異なり、求められる要件や選考ステップも違ってきます。そのため、受験予定の大学がどのような求め方をしているか、さらにどんな部署があるのかを知ることからスタートするとよいでしょう。

筆記試験対策については、一般的な公務員試験と似通った内容が問われる場合が多く、大学職員採用独自の教養試験が課されるケースもあります。論作文がある場合は、大学に関係するテーマが出されることが多く、「高等教育の現状」「大学改革」「グローバル化」「地方創生と大学の役割」などがテーマとして取り上げられる可能性があります。そのため、新聞や専門書で教育政策や大学改革の動向をリサーチし、自分の意見を言葉にしておく練習をすると効果的です。さらに、一般常識や時事問題についても同時に学ぶことで、論作文においても社会背景を踏まえた論旨展開ができるようになります。
面接やグループディスカッションにおいては、大学特有の質問やケースが出されることがあります。例えば「少子化に伴う大学の経営戦略」「学生サポート体制の充実」「研究成果を社会に還元するための施策」など、いわゆる企業のビジネス視点とは別のアプローチが求められる場合があるのです。そのため、一般企業向けの就活対策マニュアルだけでなく、大学業界の最新トピックスを常に追いかけることが欠かせません。面接練習の際は、「なぜ大学で働きたいのか」という問いにしっかり答えられるようにし、自分の経験や将来像と結びつけて語ることができるように準備しておきましょう。
専門知識の吸収という点では、大学職員として押さえておきたい制度や法令、あるいは財務関連の基礎知識を学んでおくことが大切です。特に私立大学の場合は私立学校法や学校法人会計、補助金の管理などに関する知識が必要となり、公立大学であれば地方公務員法や各自治体の条例なども関わってきます。また、国立大学ならば国立大学法人法などの影響を受けます。つまり、自分が受験する大学の設置形態を踏まえて学ぶべき法令や規則を確認し、用語や仕組みを理解しておくことが、書類選考や面接での説得力を高めるうえでも欠かせません。
以下に、一般的に大学職員が関わる業務分野を整理した表を示します。どの分野に強みを持ちたいかを考えながら学習計画を立ててみると、自ずと勉強すべき内容が見えてくるはずです。
業務分野 | 主な内容 |
---|---|
学生支援(学生課など) | 履修管理、奨学金、就職支援、留学サポートなど |
研究支援(研究推進部門など) | 研究費管理、プロジェクト運営、産学連携など |
広報・入試(入試課、広報課など) | 志願者募集、広報施策、イベント企画など |
総務・人事(法人本部など) | 人事管理、給与計算、福利厚生、労務管理など |
財務・会計(経理課など) | 予算編成、決算、学費管理、補助金処理など |
国際交流(国際センターなど) | 海外協定校との連絡、留学生支援、国際企画など |
IT・システム(情報化推進部門など) | 学内システム管理、ネットワーク整備、DX推進 |
大学職員への転職フクロウ
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このように、大学職員と一口に言っても多岐にわたる部門と職務が存在します。特定の部署に的を絞りたいのであれば、その分野で必要となる専門知識を早めに習得しておくと差別化につながります。また、総合職として幅広い業務を担当する形態であれば、法律や経営、国際情勢など汎用的な知識も求められるでしょう。いずれにせよ、大学という教育機関を支える職員には、社会情勢や政策の動きに対するアンテナが不可欠です。

勉強方法としては、まず志望する大学の公式サイトや広報資料に目を通して、その大学の方針や特色を理解することが第一歩となります。そのうえで、「自分は大学をこう支えたい」「この分野を担いたい」というイメージを固め、そこから逆算して必要な知識を洗い出すと勉強しやすくなるはずです。さらに、教育関連の雑誌や論文、新聞の教育面を積極的に読んで、高等教育に関する最新情報をアップデートしておくとよいでしょう。具体的な参考書としては、公務員試験対策の教養書、大学行政の入門書、学校法人会計の解説書などが挙げられます。また、余裕があれば「教育経営学」「高等教育論」といった専門書にも触れてみると、より深い理解が得られます。
面接練習では、大学職員になりたい理由を明確にし、大学ならではの課題や社会的役割についてどのように考えているかを、自分の言葉で伝えられるようにすることが大切です。「大学を通じて社会に貢献したい」「研究と教育の現場を支えたい」というモチベーションがあれば、それを具体的に示すエピソードを交えて語ると良い印象につながります。また、「現状の大学はこういう課題があるが、私はこう考えている」「この分野に強みがあるので、こんな働き方ができる」といった具体性を持たせることで、入職後の活躍イメージを鮮明に示せるようになるでしょう。
最後に、大学職員は教員や学生、外部との調整が多い職種ですので、コミュニケーション能力や柔軟な対応力が求められます。自ら積極的に意見を伝え、人の話を聞き、組織のために動ける姿勢が評価されることが多いです。勉強法の中に「プレゼンテーション能力」や「ディスカッション力」を磨く要素を取り入れると、筆記試験での知識だけでなく、面接や採用後においても大いに役立つはずです。たとえば、模擬面接でプレゼンを行ってみたり、大学や教育関連のテーマについてディスカッションを重ねたりするのも有効でしょう。自分が学生時代に取り組んだ活動や社会人経験で培った能力をどのように大学で生かせるのか、それをうまくアピールするためのトレーニングを重ねることが、合格への近道となります。
以上が、大学職員になるための勉強法や心構えに関する大まかな流れです。大学は社会の中でも独自の文化や制度を持ち、それぞれの法人や国公私立の立場によって事情が違います。だからこそ、しっかりと情報収集しながら、自分の興味や適性に合ったアプローチを見つけることが重要です。大学という特別なフィールドで働く魅力を感じるのであれば、ぜひ早めに行動を起こし、知識とスキルを積み重ねる努力を継続してみてください。面接当日だけでなく、将来の職務においても必ず力になるはずです。大学職員を目指す道のりは決して短くはありませんが、教育を支える立場として得られるやりがいや成長は大きく、充実したキャリアを築くことができるでしょう。